私が今まで見た中で最も衝撃を受けた映画はなんと言ってもタルコフスキーの『惑星ソラリス』だ。私が見たのは恥ずかしながらつい10年くらい前のことだが、いや仰天したのなんのって。主役の俳優が一目瞭然リトアニア語の名前なので見る前からすでに「おっと」と思ったのだが、映画そのものでの驚きは「おっと」どころではなかった。
映画の冒頭で主人公の宇宙飛行士が車を運転して街中をかけていく。この記事を読んで下さっている皆さんはここのシーンしっかり見ただろうか?私はここで死ぬほど驚いたのである。通り抜けるトンネルも、高速道路も、そして前方に見えてくる建物も全部私のよく知っているもの。つまりあそこは東京で撮影されたのだ。
中央線が山手線を突っ切って走っていく部分で高速道路と平行しているところがあるが、そこの高速道路を主人公が走る。しばらくすると赤坂見附の東急プラザホテルが見えてくる。つまり車は青山方面から赤坂見附を通って皇居方向に走る高速道路を走っているのだ。『惑星ソラリス』が作られた1970年代は私は高校生で、まさにその赤坂見附にあるさる都立高校に通っていたのだ(『46.都立日比谷高校の思ひ出』参照)。撮影そのものは私の高校時代よりちょっとだけ早いが、そこらへんの建物とかビルとか全部見覚えがある。
また小学生の時は四谷大塚進学教室とかに通っていて、会場になっていた上智大学とか水道橋にあったどこかの大学とかに日曜日ごとに行っていたから、山手線の輪の中にある中央線沿線の景色の主だったものは頭に入っている。中学・高校では予備校が代々木ゼミナールだったし、時間があるとあの辺の安映画館に入り浸っていた。見間違えようにも見間違えるわけがない。
あと、都心から五反田と目黒の間に抜けてくる高速道路も小学校のころから遠足・修学旅行となるといつも通ったのだが、そこを走っているんじゃないかと思われるシーンがあった。でもこちらは何せ小学生の時何回か通った、というだけだから、周りの高層ビルとかも変わっていて赤坂見附ほど確実には見分けられなかった。
では何か?私が進学教室で居眠りしたり赤坂でギンナンを売ったり(再び『46.都立日比谷高校の思ひ出』参照)青山や皇居付近をうろついたりしていた頭の上をタルコフスキーが俳優を連れて通っていたわけか。
もともと私は出身地だろ住んでいる町が新聞に載ったりTVに出るたびに「オレの出身地だ!」とか大仰に騒ぎ立てたり、「県人会」とかいうものを形成してツルんだりするのは見苦しいと思っていた。身近にもそういう者がいて、自分の育ったドイツの田舎町の名がニュースに出てきたり、道でそこのナンバーの車を見かけたりするとすぐ大騒ぎするのでいい加減ウザくなった私は、「たかが出身地がTVに出たくらいでいちいち騒いでたら私なんて毎日絶叫してるわ。だから嫌なのよね田舎者は」と言い放ってそれこそ嫌な顔をされていたのだが、その直後にこの映画を見て自分が大絶叫してしまった。まさに顔面ブーメランだ。
これを劇場公開当時、高校生のときに見ていたら私の絶叫のボリュームはこんなものではなかったはずだ。TVのニュースや新聞の片隅ならともかく、天下のタルコフスキー映画に見知った建物が写っているのである。
先日ロシア人の家庭に招かれた際もついこの話をしてしまったら、やはり驚かれ早速ビデオを持ち出して来られて(さすがロシア人。主だったソ連映画は全部持っていたのだった)そのシーンを解説することとなった。ついでにグーグルマップで赤坂見附辺を示しドサクサに紛れて日比谷高校も見せてあげた。卒業生の皆さん、だからあの高校はいまや国際的に知られています。
さらにこの惑星ソラリスの撮影地の話はアメリカの映画データベースIMDbにも出ている。何を隠そう、IMDbにこの情報をタレ込んだのは他でもないこの私だからだ。ここは情報を受けてデータベースに載せる前に事実確認をするから私の話がウソではないことは保証されている。
さてこの『惑星ソラリス』も『2001年宇宙の旅』もそうだが、これらを「SF映画ではない」と言っていた者がいる。「じゃあ何映画だ」と聞いたら「哲学・宗教映画だ」という答えが返ってきた。そうかも知れない。
例のスター・トレックでもクルーが時々「生命とは何か」とか「医者としての倫理」といった凄い会話を展開しているが、これはさすがに誰が見てもSFだろう。テーマが単純ないわゆる勧善懲悪ものとは違うからか、大人のファンも多い。スター・トレックのファンはトレッキーと呼ばれているが、番組そのものよりこのトレッキーのほうに結構有名人がいるのが面白い。アイザック・アシモフもトレッキーだったようだが、氏に劣らぬ大物トレッキーといえばヨルダンの現国王アブドゥッラー二世だろう。国王は1996年、まだ王子だった時にスタートレックの『ヴォイジャー』第36話Investigationsの冒頭に6秒ほど端役でゲスト出演しているそうだ。最初この話を聞いたとき私はてっきり聞き違いか空耳かと思った。欧州の貴族王族ならともかくイスラム教国の国王陛下たる者がそんな下賎なマネをするとは信じられなかったのである。ところがこれは本当だった。びっくり。
これが『スター・トレック』出演のヨルダン国王アブドゥッラー二世。当時はまだ王子だった。ヨルダン国防軍の制服姿よりこちらのほうがキマっている…
さらに聞くところによるとこのアブドゥッラー二世は時々変装してお忍びで国内を歩き、国民の直の声を聞こうと勤めているそうだ。もっとも時々その「お忍び」がバレているという。
「お忍びで民の中に入って行き直接声を聞こうとした政治家」として私が知っている例にはこのアブドゥッラー二世と水戸黄門のほかに元ノルウェー首相のストルテンベルク氏がいる。ドイツの新聞に載っていた。首相はタクシーの運転手に変装し、乗せた客に話しかけて市民の声を直接聞こうとしたそうだ。もっともその際かつらをかぶるとか付け髭をして変装したわけではなく、単にそのままの姿でタクシーを運転しただけだから大抵すぐバレたそうである。しかしバレたらバレたで客も首相相手に意見を述べてくれたとのことだ。また、氏はタクシー料金は受け取らなかったが、乗客は口を揃えて「首相は車の運転が下手だった」と証言しているという。ストルテンベルク氏はノルウェーで極右によるテロ事件が起きた時見せた危機管理の腕を買われて現在NATOの事務総長をしている。残念ながらトレッキーかどうかはわからない。
この記事は身の程知らずにもランキングに参加しています(汗)。
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映画の冒頭で主人公の宇宙飛行士が車を運転して街中をかけていく。この記事を読んで下さっている皆さんはここのシーンしっかり見ただろうか?私はここで死ぬほど驚いたのである。通り抜けるトンネルも、高速道路も、そして前方に見えてくる建物も全部私のよく知っているもの。つまりあそこは東京で撮影されたのだ。
中央線が山手線を突っ切って走っていく部分で高速道路と平行しているところがあるが、そこの高速道路を主人公が走る。しばらくすると赤坂見附の東急プラザホテルが見えてくる。つまり車は青山方面から赤坂見附を通って皇居方向に走る高速道路を走っているのだ。『惑星ソラリス』が作られた1970年代は私は高校生で、まさにその赤坂見附にあるさる都立高校に通っていたのだ(『46.都立日比谷高校の思ひ出』参照)。撮影そのものは私の高校時代よりちょっとだけ早いが、そこらへんの建物とかビルとか全部見覚えがある。
また小学生の時は四谷大塚進学教室とかに通っていて、会場になっていた上智大学とか水道橋にあったどこかの大学とかに日曜日ごとに行っていたから、山手線の輪の中にある中央線沿線の景色の主だったものは頭に入っている。中学・高校では予備校が代々木ゼミナールだったし、時間があるとあの辺の安映画館に入り浸っていた。見間違えようにも見間違えるわけがない。
あと、都心から五反田と目黒の間に抜けてくる高速道路も小学校のころから遠足・修学旅行となるといつも通ったのだが、そこを走っているんじゃないかと思われるシーンがあった。でもこちらは何せ小学生の時何回か通った、というだけだから、周りの高層ビルとかも変わっていて赤坂見附ほど確実には見分けられなかった。
では何か?私が進学教室で居眠りしたり赤坂でギンナンを売ったり(再び『46.都立日比谷高校の思ひ出』参照)青山や皇居付近をうろついたりしていた頭の上をタルコフスキーが俳優を連れて通っていたわけか。
もともと私は出身地だろ住んでいる町が新聞に載ったりTVに出るたびに「オレの出身地だ!」とか大仰に騒ぎ立てたり、「県人会」とかいうものを形成してツルんだりするのは見苦しいと思っていた。身近にもそういう者がいて、自分の育ったドイツの田舎町の名がニュースに出てきたり、道でそこのナンバーの車を見かけたりするとすぐ大騒ぎするのでいい加減ウザくなった私は、「たかが出身地がTVに出たくらいでいちいち騒いでたら私なんて毎日絶叫してるわ。だから嫌なのよね田舎者は」と言い放ってそれこそ嫌な顔をされていたのだが、その直後にこの映画を見て自分が大絶叫してしまった。まさに顔面ブーメランだ。
これを劇場公開当時、高校生のときに見ていたら私の絶叫のボリュームはこんなものではなかったはずだ。TVのニュースや新聞の片隅ならともかく、天下のタルコフスキー映画に見知った建物が写っているのである。
先日ロシア人の家庭に招かれた際もついこの話をしてしまったら、やはり驚かれ早速ビデオを持ち出して来られて(さすがロシア人。主だったソ連映画は全部持っていたのだった)そのシーンを解説することとなった。ついでにグーグルマップで赤坂見附辺を示しドサクサに紛れて日比谷高校も見せてあげた。卒業生の皆さん、だからあの高校はいまや国際的に知られています。
さらにこの惑星ソラリスの撮影地の話はアメリカの映画データベースIMDbにも出ている。何を隠そう、IMDbにこの情報をタレ込んだのは他でもないこの私だからだ。ここは情報を受けてデータベースに載せる前に事実確認をするから私の話がウソではないことは保証されている。
さてこの『惑星ソラリス』も『2001年宇宙の旅』もそうだが、これらを「SF映画ではない」と言っていた者がいる。「じゃあ何映画だ」と聞いたら「哲学・宗教映画だ」という答えが返ってきた。そうかも知れない。
例のスター・トレックでもクルーが時々「生命とは何か」とか「医者としての倫理」といった凄い会話を展開しているが、これはさすがに誰が見てもSFだろう。テーマが単純ないわゆる勧善懲悪ものとは違うからか、大人のファンも多い。スター・トレックのファンはトレッキーと呼ばれているが、番組そのものよりこのトレッキーのほうに結構有名人がいるのが面白い。アイザック・アシモフもトレッキーだったようだが、氏に劣らぬ大物トレッキーといえばヨルダンの現国王アブドゥッラー二世だろう。国王は1996年、まだ王子だった時にスタートレックの『ヴォイジャー』第36話Investigationsの冒頭に6秒ほど端役でゲスト出演しているそうだ。最初この話を聞いたとき私はてっきり聞き違いか空耳かと思った。欧州の貴族王族ならともかくイスラム教国の国王陛下たる者がそんな下賎なマネをするとは信じられなかったのである。ところがこれは本当だった。びっくり。
これが『スター・トレック』出演のヨルダン国王アブドゥッラー二世。当時はまだ王子だった。ヨルダン国防軍の制服姿よりこちらのほうがキマっている…
さらに聞くところによるとこのアブドゥッラー二世は時々変装してお忍びで国内を歩き、国民の直の声を聞こうと勤めているそうだ。もっとも時々その「お忍び」がバレているという。
「お忍びで民の中に入って行き直接声を聞こうとした政治家」として私が知っている例にはこのアブドゥッラー二世と水戸黄門のほかに元ノルウェー首相のストルテンベルク氏がいる。ドイツの新聞に載っていた。首相はタクシーの運転手に変装し、乗せた客に話しかけて市民の声を直接聞こうとしたそうだ。もっともその際かつらをかぶるとか付け髭をして変装したわけではなく、単にそのままの姿でタクシーを運転しただけだから大抵すぐバレたそうである。しかしバレたらバレたで客も首相相手に意見を述べてくれたとのことだ。また、氏はタクシー料金は受け取らなかったが、乗客は口を揃えて「首相は車の運転が下手だった」と証言しているという。ストルテンベルク氏はノルウェーで極右によるテロ事件が起きた時見せた危機管理の腕を買われて現在NATOの事務総長をしている。残念ながらトレッキーかどうかはわからない。
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