自他共に認めるデジタル音痴、今に至るもスマホの類いは一切持たず、全てデスクトップと固定回線電話で生活しているガラパゴス島の住民の私がVPNを使うことになってしまった。ガラパゴス島の私のパソコンにはロクにプログラムも入っていない。「インストール」という作業が怖く、ちょっと指示と違っていたりわからない画面が出てきたりするとすぐパニック状態になるので、ウィンドウズに追加して入れたのは Firefox とリブレオフィスとアクロバットリーダーくらい。あと、ウィルスバスターの無料版。実にスカスカである。その私にとってVPNのインストールなどというのはまさに世紀の大偉業であった。

 ことの起こりはすでに4年ほど前、2022年に Yahoo ニュースが欧州から見られなくなったことである。そのときVPNを勧められた。確かに Youtube でもマカロニウエスタンを見ようとすると「このビデオはあなたの居住地からは鑑賞できません」と真っ黒い画面に冷たく言われることもあり、これを突破できたらいいなとは思った。思ったが私はプログラムのインストールが怖い。「インストールの仕方」に従ってやると必ずどこかで躓いたりそこに書いてある作業のクリック場所がわからず右往左往するのが常だからだ。それに別に Yahoo ニュースなど見なくても死ぬようなこともないし、Youtubeではハネられるマカロニウエスタンはロシアのさるサイトにアップされていることも多いのであまり困らない。そこで、まあそのうちと思っているうちに4年の歳月が流れたのである。

欧州からYahooにいくとこうなる。
yahoo
 それでも去年の中ごろには意を決してSNSでVPNの話をしたら、何人もが筑波大学のVPN Gateなるものを紹介してくれた。そこでそのサイトに行ってみたところ、インストールや操作の仕方がクソ難しそうな言葉で書いてあるのでビビってしまい、「まあそのうち」に戻ってしまっていた。
 ところが先日、いつものようにライブドアブログのログイン画面に行こうとしたらロード中の表示がグルグル回るばかりで全く入っていけない。ログインできないどころか、自分の書いた記事を外から読むことさえできなくなっていた。他にも特にドメインが jp になっているサイトに入れないものがいくつもあった。よりによってどれも私が今まで問題なく読んだりログインしたりしてきたところばかりである。一瞬焦ったが、こういうことは時々あるので一日待ってみることにした。しかしそういえばその何日か前にさるSNSに(いつものように)ログインしようとしたら「セキュリティ上の問題が発生したためログインできませんでした。時間をおいてやり直してください」と言われ、少し時間を置いてもその日はできず、次の日に繰り越したことがあるのを思いだし、ちょっと嫌な予感がした。するとその嫌な予感の通り、翌日になっても全く入れない。ネットで検索して次のことを行った。

1.ブラウザをプライベートモードにする。
2.アドブロックを一時解除する。
3.ブラウザのキャッシュを一掃する。
4.ルーターを再起動する。
5.プロンプト画面でOS自体のDNSキャッシュを消す。

どれも効果がなかった。特に5が恐怖で、あの黒い画面にコマンドを打ち込むなど私にとってはもう本当に恐ろしい以外の何物でもない。その怖いのを我慢して作業したのに全く無駄だった。それを別のSNSで相談すると知り合いが助言してくれて、次の事を行った。

6.DNSをパブリックのに変更する(Googleのを使った)。
7.TCP/IPv6を外す。

するとあら不思議、SNSの方には入れた。入れたが画面が変わるのに数分待ちという状態だ。しかし10分以上かかっても「しばらくこのサイトには来られない」と伝言だけはできたので、少し気が楽になった。ライブドアブログには入れないままだった。翌日になるとSNSの方にもまた入れなくなっていた。
 この状態になったのが月曜日、その週の日曜日についにライブドアブログのヘルプに連絡した。ブログには入れなかったがライブドアのメインサイトには入れたのでヘルプに飛べたのだ。
 すると月曜日には返事が来て、ライブドア側では何の問題も確認できないが、もっと詳しく状況を報せて欲しいと言ってきた。何回かやり取りをした後、家のパソコンからは Firefox でやっても Edge でやっても、はたまたもう一つのノートブックパソコンからも入れないが、家から出て全く別のところからアクセスするとできること、ライブドアばかりでなく他にも入れないサイトがあることなどから、「おそらくサーバー側の問題だから問いあわせて見て欲しい」と回答を貰い、さっそく近くにあるドイツテレコムのお客様センターに行った。ここからが「サービスの砂漠」と言われるドイツの本領発揮だ。人の話をロクに聞かないうちから「あっ、それはこちらの問題ではありませんが、何だったらホットラインに相談してください」。ホットラインに電話すると思った通りいつまでも録音音声や人を舐め切ったBGMが続くばかりで一向に繋がらない。しかたがないからドイツテレコムのサイトの「コミュニティ」というところにログインして相談スレを立ち上げた。ここはもちろんテレコムの社員が回答するのではなく、顧客同士のコミュである。そういうところに来る人と言うのは技術フリークが多く、そこにこんなガラパゴスが無知丸出しな質問をしたらもの笑いになるのではないかとは思ったが、もうそういう心配をしている余裕はない。ビクビクしていたらなんと何人かが親切に回答してくれた。それらをまとめると、やはり日本に本拠のあるゲームサイトに繋がらないと苦情を言っていた人がいる、その人たちもテレコム以外の回線では繋がると言っていたから、これはドイツテレコムが日本に繋ぎ損なっているのだと思われる、またVPNだと繋がると言っていたから試してみたらどうだろう、ということになった。
 
 こうなるとさすがのガラパゴスも腹を決めざるを得ない。筑波大学の VPN Gate のサイトに飛ぶと「この Web サイトの設置場所」として「筑波大学筑波キャンパス 〒305-8573 茨城県つくば市天王台 1 丁目 1 番地 1」とある。これを見て私は不覚にも懐かしさのあまり涙チョチョ切れてしまった(もっとも私のいたころは「茨城県新治郡桜村」と言ったが)。しかしそんなことでウルウルしている場合ではないので気を取り直して「接続方法」に行く。しかしこれはインストールしたプログラムの動かし方だから、そのインストールをどうやるかですでに立往生しているガラパゴスにとってはすでに情報が数歩先、手の届かないところに進んでいる上に次のような指示がある:「VPN 接続中は、Windows 上に仮想的な LAN カードが作成され、その仮想 LAN カードに「10.211.」で始まるプライベート IP アドレスが割当てられます。また、デフォルトゲートウェイが仮想 LAN カードに設定されます。このことを確認するためには、Windows のコマンドプロンプトから「ipconfig /all」コマンドを実行してみてください」。こりゃ私にとっては完全にナワトル語だ。何を言っているのか全く分からない。しかもそこには恐怖のプロンプト画面の画像まで開張り付けてある。早々に一旦退散して外のネット世界で検索しまくったところ、ありがたやこのプログラムのインストールの仕方を手取り足取り親切に解説してくれているYoutubeビデオがあった。そのビデオを2日に渡って繰り返し見て手順を頭に叩き込む。でないと操作の途中で何か事故でもあって心臓発作を起こしかねないからだ。

私のようなデジタル音痴はこういうことを言われてもわからない。
https://www.vpngate.net/ja/howto_softether.aspx#windowsから。

Prompt
 そして静かな日曜日の午前、いよいよSoftEther VPNとかいうプログラムをダウンロード&インストールした。ほぼビデオの通りの操作で良かったが、恐れていた通り知らない画面、知らない現象が現れてプチビビり状態にはなった。が、ガラパゴス君は頑張ったのである。まず躓きの第一歩は、ダウンロードした zip ファイルを展開する操作とクリック場所がビデオと少し違っていたことだ。次にビデオではインストール時の画像が全て日本語なのに、私んとこではそれが全て英語になっていたことである。多分こちらの IP アドレスがドイツなので自動的に英語バージョンがロードされたのに違いない。3番目はインストールの最中にビデオにはない質問項が現れたことだ。当然英語で質問されたので瞬間的に緊張した。「サーバ―提供をしますか?」というもので、全く白紙の状態でこれを聞かれたら意味がわからなかったかもしれないが、その前に筑波大のVPNがボランティアのサーバーの協力によるものだと知らされていたので無視して先に行った。その後は全くビデオで言われた通りで、手頃なサーバーを選んで繋いでみたらなんと本当に(当たり前だ)IPアドレスが日本になっていた。

 その間もライブドアブログなどにドイツテレコムを通っていこうとしたが、相変わらず足止めを喰らっていたのにIPを日本にしたらスポンと行けた。魔法みたいだ。面白くなってIPを日本にしたりドイツにしたり、切ったり繋げたりして半日遊んでしまった。する前は何年も躊躇していたのに、たまに一旦何かをインストールするとすぐはしゃぎだす、これも典型的なデジタル音痴の特徴である。
 さてVPNを入れて1・2日経つとドイツテレコムからも入れるようになった。この遅さはドイツ鉄道並みだ。遅い上に顧客に対するサービスがなっていない。トラブルシューティングを顧客側に丸投げするって何なんだろう。毎月金を払っているのはこっちなんだぞ?タダで利用しているライブドアブログの方がよっぽどまともな対応だった。
 と、ライブドアを褒めたらその翌日突然そのニュースサイトにいけなくなっていた。ブログでなくニュースサイトの方である。EEA、つまりEU+ノルウェー、アイスランドとさらにプラスで英国からのアクセスが不可能になった。上で述べたYahooニュースの後を追ったのである。理由はどちらのニュースサイトも明らかにしていないが、EUはIT企業に対しての規制が鬼のように厳しく、ちょっと注意を怠ると地雷を踏んでしこたま制裁金を取られる。触らぬ神に祟りなしでEUを避けたのだろうが、それにしても偶然その直前にVPNを入れていたのは何かの啓示だったのか。ライブドアのメインサイトにも行けないので、ヘルプに連絡することすらできない羽目になるところだった。間一髪だ。

ライブドアニュースも今は見られない。
livedoor
 ログイン問題が一応解決すると、今度は VPN Gate の口コミ評などが知りたくなって検索してみた。有料無料の VPN のメリットデメリットなどがあちこちのサイトで議論されているが、大まかに言ってVPN Gate は無料でしかも会員登録がいらず、そのうえ運営元が国立大学だから無料で誘って結局有料版に誘いこんだりといった阿漕なことはされる心配がないという大きなメリットがある代わりに、セキュリティや接続の安定性の面で他の有料VPNに比べて不安が残るということだ。VPNGateでは使用歴のログが一定期間残るからである。このプロジェクト自体が研究のためなのだから使用データが残るのはまあ当たり前である。さらにサーバー提供もボランティアに頼っているから誰が提供しているかわからない。悪徳サーバーが混じっていないという保証がない。また何千ものボランティアサーバーは何せ個人だから接続が悪い事もある。また何かトラブルがあっても「顧客サービス」というものがない。
 多くのサイトではこれらのメリットデメリットを天秤にかけて大体次のような結論に達していた:「ちょっとニュースを見たりちょっとしたビデオを見るのには VPN Gate でいい。何より無料で運営が国立大学という圧倒的な安心感がある。しかし匿名性を重視したかったり映画やTV番組を見ることが主体だったら有料のにしたほうがいい。とくにオンラインバンキングとかパスワードとかは VPN Gate を通さないほうがいい。要は上手に使い分けなさい。」つまり VPN Gate はまさに私のような「困ったときや非常時にだけちょっと別IPで入りたい」程度の利用者向きだという事だ。事実私と同程度のユーザーがその気軽さゆえにこれを勧めているのをよく見かけた。
 だが中には「VPN Gate は使うな」と明確に言い切っているのもあった。ちょっと注意して使いさえすればとても便利だと思うのに「使うな」とまで言うのはなぜか気になったので、さらにそういうサイトを見てみたらほぼ全部「そのかわりこちらがおススメ」などと言って有料サイトのリンクを張ったりして宣伝活動をしている。ひょっとしてVPN会社のやらせ記事か少なくともいくらか貰っているのかもしれない。こっちの方がよっぽど油断がならないと思った。
 VPN Gate を起動させるとスタンバイ中のサーバー一覧が出る。その中から好きなものを選んで接続するわけだが、それらをボーッと見ていて気付いたことがある。時々一人で10個、いや20個くらいサーバー提供しているところがあるのだ。考えたのだが、これは筑波大学の第三学群棟(昔は「第三学群」という名前だった)のコンピュータールームのパソコンを総動員してサーバーにしている、つまり研究室所持のパソコンか、教授のゼミの学生たちが教授に言われて自宅のパソコンを提供させられているかのどちらか、要は大学サイドの接続先なのではないだろうか。
 確かに日本から海外のサーバーに接続するのは誰が向こうにいるかわからない怖さがあるが、逆方向、海外から日本に接続する場合は安心感が一段上がる気がする。とにかく私は選んだ接続先に繋ぐ際には「ちょっと失礼します」、接続を外すときには「ありがとうございました」と声をかけている。脳が完全にアナログ思考なのである。
 なお、先に変更したDNSはそのままパブリックのにしてある。

この記事は身の程知らずにもランキングに参加しています(汗)。
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