ドイツ語の映画のタイトルに最も頻繁に登場する名前といえばダントツに「ジャンゴ」(Django)だろう。そう、言わずと知れた『続・荒野の用心棒』(原題はズバリ『ジャンゴ』)の主人公の名前だが、この映画が当時ヨーロッパ中でクソ当たりしたために、後続のマカロニウエスタンの相当数が露骨に柳の下のドジョウを狙って主人公の名前をジャンゴとしているのだ。
最近は「ジャンゴ」というとタランティーノの方をコルブッチの原作より先に思い浮かべる、どころかそれしか思い浮かばない若造(おっと失礼)が多いようだが、そういう人は、黒澤明の『用心棒』を見て、「これ、レオーネの『荒野の用心棒』とストーリーそっくりじゃないかよ」と黒澤監督をパクリ扱いしたさるドイツ人を笑えまい。
さて、そのジャンゴ映画量産のことだが、ドイツ人はやることが徹底しているので、もとの映画では主人公が全く別の名前だった作品にまで「○○のジャンゴ」というドイツ語タイトルをつけ、吹き替えで名前を勝手にジャンゴにしてしまっている。フランコ・ネロが主役であればほぼ自動的に主人公は「ジャンゴ」。で、『ガンマン無頼』の主人公バート・サリバンもドイツではジャンゴだ。さらにネロがティナ・オーモンと撮った『裏切りの荒野』という作品。これはメリメの『カルメン』を土台にしたものだから、主人公も当然ホセという名前だったが、ドイツ語版ではこれが脈絡もなくジャンゴにされている。マカロニウエスタンのネタにするなんてメリメへの冒涜ではないのか。とかいうと逆にマカロニウエスタンへの冒涜になるかもしれないが。
とにかくフランコ・ネロばかりでなく、原作ではサルタナという名前だったジョージ・ヒルトンの役もアンソニー・ステファン(まあこれは原作からすでにジャンゴだった役もかなりあったが)もドサクサに紛れてジャンゴにされた。テレンス・ヒルも原作とは無関係にジャンゴになったことがある。ジュリアーノ・ジェンマやジャン・ルイ・トランティニャンまでジャンゴ扱いされなかったのは奇跡というほかはない。
下に示すのはそういった一連の「ジャンゴ映画」の一覧表だが、イタリア語原題と比べてドイツではいかに執拗に「ジャンゴ」が映画タイトルになっているかわかるだろう。一番上が製作年、その下にタイトルだが、イタリックで示したのがイタリアでの原題(まるでダジャレだ)、イタリア語の下がドイツ語タイトルである。日本で劇場公開されていない作品など邦題がわからなかったものが多く、正直いちいち調べるのもカッタルかったので邦題のないのが多くて申し訳ない。
しかし一方マカロニウエスタンには、私のような普通になんとなく映画を見ているだけの常人の想像を絶するようなフリークがいて、作品の製作年と監督や主役の名前を見ればどの映画かすぐわかり内容がたちまち思い浮かんでくるという変態いや専門家ばかりだから邦題など必要あるまい。このリストに上がっているジャンゴ映画は全部見た、と言いだす人がいても私は全然驚かない。ドイツは特にそうだ。私など「見たような気はするが内容は全然覚えていない」という程度の不確実なものまで勘定して水増し申告しても、この中で見た映画はせいぜい10作品くらいである。完全に修行が足りない。
監督:セルジオ・コルブッチ、キャスト:フランコ・ネロ、ロレダナ・ヌシアク
『真昼の用心棒』
監督:ルチオ・フルチ、キャスト:フランコ・ネロ、ジョージ・ヒルトン
監督:マウリツィオ・ルチディ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、ハント・パワーズ
『地獄から来たプロガンマン』
監督:アルベルト・カルドーネ、キャスト:アンソニー・ステファン、フェルナンド・サンチョ
監督:ジャンニ・グリマルディ、キャスト:ロバート・ウッズ、へルガ・アンダーソン
『ガンマン無頼』
監督:フェルディナンド・バルディ、キャスト:フランコ・ネロ、アルベルト・デラクア
監督:マッシモ・プピロ、キャスト:ジョージ・イーストマン、リアナ・オルフェイ
監督:エドアルド・ムラルジア、キャスト:イヴァン・ラシモフ、エレーヌ・シャネル
監督:ジュゼッペ・コリッツィ、キャスト:テレンス・ヒル、バッド・スペンサー
『テキサスから来た2人のリンゴ』
監督:マリーノ・ジロラーミ、キャスト:フランコ・フランキ、チッチオ・イングラシア
監督:ロベルト・ビアンキ・モンテロ、キャスト:モンティ・グリーンウッド、ガブリエラ・ジョルジェッリ
監督:オスヴァルド・チヴィラーニ、キャスト:ガイ・マディソン、ガブリエレ・ティンティ
監督:ジュリアーノ・カルニメオ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、ウォルター・バーンズ
監督:エドアルド・マラルジア、キャスト:イヴァン・ラシモフ、ペドロ・サンチェス
監督:ジョヴァンニ・ファゴ、キャスト:ジャンニ・ガルコ、クラウディオ・カマソ
『皆殺しのジャンゴ』
監督:フェルナンド・バルディ、キャスト:テレンス・ヒル、ホルスト・フランク
『ジョニー・ハムレット』
監督:エンツォ・カステラーリ、キャスト:アンドレア・ジョルダーナ、ギルバート・ローランド
『情無用のジャンゴ』
監督:ジュリオ・クエスティ、キャスト:トマス・ミリアン、ピエロ・ルッリ
監督:セルジオ・ガローネ、キャスト:イヴァン・ラシモフ、ジョヴァンニ・チャンフリーリャ
監督:マリオ・ランフランキ、キャスト:ロビン・クラーク、トマス・ミリアン
『裏切りの荒野』
監督:ルイジ・バッツォーニ、キャスト:フランコ・ネロ、ティナ・オーモン
監督:レオン・クリモフスキー、キャスト:リチャード・ワイラー、ブラッド・ハリス
監督:ロベルト・マウリ、キャスト:タブ・ハンター、エリカ・ブランク
監督:パオロ・ビアンキーニ、キャスト:クレイグ・ヒル、レア・マッサリ
監督:ジャンフランコ・バルダネッロ、キャスト:ロバート・ウッズ、ルシエンヌ・ブリドゥ
監督:ヴィンツェンツォ・ムソリーノ、キャスト:ジョージ・アルディソン、ピーター・マーテル
監督:ドメニコ・パオレッラ、キャスト:ジョン・リチャードソン、ミモ・パルマーラ
監督:セルジオ・ガローネ、キャスト:アンソニーステファン、ウィリアム・ベルガー
監督:パオロ・ビアンキーニ、キャスト:ロバート・ウッズ、ジョン・アイルランド
監督:ホセ・ルイス・メリーノ、キャスト:ラング・ジェフリース、フェミ・ベヌッシ
監督:マリオ・カイアーノ、キャスト:アンソニー・ステファン、ウィリアム・ベルガー
監督:オスヴァルド・チヴィラーニ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、ジョン・アイルランド
監督:ジョヴァンニ・ファゴ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、ポール・スティーブンス
監督:ニック・ノストロ、キャスト:リチャード・ハリソン、パメラ・チューダー
『黄金の三悪人』
監督:エンツォ・カステラーリ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、ギルバート・ローランド
監督:エンツォ・バルボーニ、キャスト:レオナード・マン、ウッディー・ストロード
監督:レオポルド・サヴォナ、キャスト:ワイド・プレストン、ロレダナ・ヌシアク
監督:セルジオ・ガローネ、キャスト:アンソニーステファン、パオロ・ゴズリーノ
監督:パスクァーレ・スキティエリ、キャスト:ジョルジョ・アルディソン、トニー・ケンダル
監督:デモフィロ・フィダーニ、キャスト:ハント・パワーズ、ゴードン・ミッチェル
監督:ジュリアーノ・カルニメオ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、チャールズ・サウスウッド
監督:デモフィロ・フィダーニ、キャスト:ハント・パワーズ、ファビオ・テスティ
監督:セルジオ・ガローネ、キャスト:ジャコモ・ロッシ・スチュアート、アルド・サンブレル
監督:ルイジ・バッツェラ、キャスト:ジェフ・キャメロン、ジョン・デズモント
監督:マリオ・モローニ、キャスト:ロバート・ウッズ、ガブリエラ・ジョルジェッリ
監督:セルジオ・ガローネ、キャスト:グイド・ロロブリジーダ、タイ・ハーディン
監督:カルロ・クロッコーロ、キャスト:トニー・ケンダル、マリーナ・ムリガン
監督:エドアルド・ムラルジア、キャスト:アンソニー・ステファン、クラウコ・オノラート
監督:タニオ・ボッチア、キャスト:リチャード・ハリソン、アニタ・エクバーグ
監督:ネッロ・ロサーティ、キャスト:フランコ・ネロ、クリストファー・コネリ
さて、その元祖となった『続・荒野の用心棒』の主人公ジャンゴだが、監督のセルジオ・コルブッチはこの名前をヨーロッパのジャズ・ギターの第一人者ジャンゴ・ラインハルトから持って来ている。ラインハルトはベルギー生まれのロマ、フランス語でマヌシュと呼ばれるグループの出身らしいが、このマヌシュは『50.ヨーロッパ最大の少数言語』の項で述べたようにドイツのロマ、シンティと同じ方言グループに属している。つまり「ジャンゴ」という名前は本来ロマニ語。その名前の由来について調べてみたら2説あった。
1.Django(またはDžango)はJean、Johannes、Giovanniという名前のロマニ語バージョンである。
2.Džangoとはロマニ語でI wake up、または I woke upという意味である。
困った。どちらの説でも疑問点が出てきてしまったからだ。
1について:
Jean、Johannes、Giovanniのロマニ語バージョンならDžanoとかいう形にはならないのか?その/g/という音素はどこから来たのか。
2について:
調べてみたら「目覚める」というロマニ語はdžungadol、方言によってはdžangadolまたはdžangavel(辞書形は3人称単数形)だそうだが、それなら「私は目覚める」はdžangaduaまたはdžangavua(シンティ)、あるいはdžangadavもしくはdžangavav(その他の方言)、「私は目覚めた」だと džangadomまたはdžangavomとか何とかになると思うのだが。/d/または/v/の音素が消えてしまっているのはなぜか?
つまりどちらも確かに形は似ているとはいえ、前者は音素が一つ余り、後者は一つ足りない。帯に短し襷に長しでどちらもストレートにDžangoにはならない。もっともシンティのdžangavuaが一番近いなとは思ったし、
džangavua→[dʒanɡavʊa]→[dʒanɡaʊa]→[dʒanɡɔ:]→[dʒanɡɔ]
とかなんとか音の変化の流れを解釈すれば説明がつかないことはない。
しかし私はロマニ語ができないので確かなことはわからないし、こんな小さなことは本なんかには出ていないだろうと思ったので人に聞くしかないなと判断し、まずオーストリアのグラーツ大学の教授に上のようなことを述べ、「どっちが正しいんでしょうか?」と問い合わせのメールを出したが音沙汰なし。「この忙しいのになんなんだこの馬鹿メールは?」と無視されたか(されて当然だと我ながら思う)、スパム扱いされて自動的にゴミ箱行きになったかと思い、今度はヨーロッパでロマニ語研究プロジェクトを立てているもう一つの大学、イギリスのマンチェスター大にメールを出してみたら2日後に次のような返事が来た。
Dear 人食いアヒルの子,
unfortunately we are not able to help you.
Reconstructing the etymology of personal name is almost impossible if there are no written records of a given name across a considerable length of time. Unfortunately, this is the case for Django.
Sorry to disappoint you,
*** ***
Romani Project
School of Languages, Linguistics & Cultures
University of Manchester
Manchester M13 9PL, UK
*** ***という部分は研究員の方の名前だが、もちろん伏せ字にしておいた。しかし2日もたってから返事が来たということは一応まじめに検討してくれたのか、それとも単に放っておかれたのか?どちらにしても大変お騒がせしました。
と、いうわけでジャンゴという名前の由来は「わからない」というつまらないオチに終わってしまった。
この記事は身の程知らずにもランキングに参加しています(汗)。
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最近は「ジャンゴ」というとタランティーノの方をコルブッチの原作より先に思い浮かべる、どころかそれしか思い浮かばない若造(おっと失礼)が多いようだが、そういう人は、黒澤明の『用心棒』を見て、「これ、レオーネの『荒野の用心棒』とストーリーそっくりじゃないかよ」と黒澤監督をパクリ扱いしたさるドイツ人を笑えまい。
さて、そのジャンゴ映画量産のことだが、ドイツ人はやることが徹底しているので、もとの映画では主人公が全く別の名前だった作品にまで「○○のジャンゴ」というドイツ語タイトルをつけ、吹き替えで名前を勝手にジャンゴにしてしまっている。フランコ・ネロが主役であればほぼ自動的に主人公は「ジャンゴ」。で、『ガンマン無頼』の主人公バート・サリバンもドイツではジャンゴだ。さらにネロがティナ・オーモンと撮った『裏切りの荒野』という作品。これはメリメの『カルメン』を土台にしたものだから、主人公も当然ホセという名前だったが、ドイツ語版ではこれが脈絡もなくジャンゴにされている。マカロニウエスタンのネタにするなんてメリメへの冒涜ではないのか。とかいうと逆にマカロニウエスタンへの冒涜になるかもしれないが。
とにかくフランコ・ネロばかりでなく、原作ではサルタナという名前だったジョージ・ヒルトンの役もアンソニー・ステファン(まあこれは原作からすでにジャンゴだった役もかなりあったが)もドサクサに紛れてジャンゴにされた。テレンス・ヒルも原作とは無関係にジャンゴになったことがある。ジュリアーノ・ジェンマやジャン・ルイ・トランティニャンまでジャンゴ扱いされなかったのは奇跡というほかはない。
下に示すのはそういった一連の「ジャンゴ映画」の一覧表だが、イタリア語原題と比べてドイツではいかに執拗に「ジャンゴ」が映画タイトルになっているかわかるだろう。一番上が製作年、その下にタイトルだが、イタリックで示したのがイタリアでの原題(まるでダジャレだ)、イタリア語の下がドイツ語タイトルである。日本で劇場公開されていない作品など邦題がわからなかったものが多く、正直いちいち調べるのもカッタルかったので邦題のないのが多くて申し訳ない。
しかし一方マカロニウエスタンには、私のような普通になんとなく映画を見ているだけの常人の想像を絶するようなフリークがいて、作品の製作年と監督や主役の名前を見ればどの映画かすぐわかり内容がたちまち思い浮かんでくるという変態いや専門家ばかりだから邦題など必要あるまい。このリストに上がっているジャンゴ映画は全部見た、と言いだす人がいても私は全然驚かない。ドイツは特にそうだ。私など「見たような気はするが内容は全然覚えていない」という程度の不確実なものまで勘定して水増し申告しても、この中で見た映画はせいぜい10作品くらいである。完全に修行が足りない。
1966
Django
Django
『続・荒野の用心棒』監督:セルジオ・コルブッチ、キャスト:フランコ・ネロ、ロレダナ・ヌシアク
1966
Le colt cantarono la morte e fu... tempo di massacro
Django – Sein Gesangbuch war der Colt『真昼の用心棒』
監督:ルチオ・フルチ、キャスト:フランコ・ネロ、ジョージ・ヒルトン
1966
Django spara per primo
Django – Nur der Colt war sein Freund
『復讐のジャンゴ・岩山の決闘』
監督:アルベルト・デ・マルティーノ、キャスト:グレン・サクソン、フェルナンド・サンチョ1966
La più grande rapina nel West
Ein Halleluja für Django監督:マウリツィオ・ルチディ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、ハント・パワーズ
1966
Pochi Dollari per Django
Django kennt kein Erbarmen
『無宿のプロガンマン』
監督:レオン・クリモフスキー、キャスト:アンソニー・ステファン、フランク・ヴォルフ1966
Sette Dollari sul rosso
Django – Die Geier stehen Schlange『地獄から来たプロガンマン』
監督:アルベルト・カルドーネ、キャスト:アンソニー・ステファン、フェルナンド・サンチョ
1966
Starblack
Django – Schwarzer Gott des Todes監督:ジャンニ・グリマルディ、キャスト:ロバート・ウッズ、へルガ・アンダーソン
1966
Texas, addio
Django, der Rächer『ガンマン無頼』
監督:フェルディナンド・バルディ、キャスト:フランコ・ネロ、アルベルト・デラクア
1967
Bill il taciturno
Django tötet leise監督:マッシモ・プピロ、キャスト:ジョージ・イーストマン、リアナ・オルフェイ
1967
Cjamango
Django – Kreuze im blutigen Sand監督:エドアルド・ムラルジア、キャスト:イヴァン・ラシモフ、エレーヌ・シャネル
1967
Dio perdona … io no!
Gott vergibt… Django nie!監督:ジュゼッペ・コリッツィ、キャスト:テレンス・ヒル、バッド・スペンサー
1967
Due rrringos nel Texas
Zwei Trottel gegen Django『テキサスから来た2人のリンゴ』
監督:マリーノ・ジロラーミ、キャスト:フランコ・フランキ、チッチオ・イングラシア
1967
Le due facce del dollaro
Django - sein Colt singt sechs Strophen監督:ロベルト・ビアンキ・モンテロ、キャスト:モンティ・グリーンウッド、ガブリエラ・ジョルジェッリ
1967
Il figlio di Django
Der Sohn des Django監督:オスヴァルド・チヴィラーニ、キャスト:ガイ・マディソン、ガブリエレ・ティンティ
1967
Il momento di uccidere
Django – Ein Sarg voll Blut監督:ジュリアーノ・カルニメオ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、ウォルター・バーンズ
1967
Non aspettare, Django, spara!
Django – Dein Henker wartet監督:エドアルド・マラルジア、キャスト:イヴァン・ラシモフ、ペドロ・サンチェス
1967
Per 100.000 Dollari t’ammazzo
Django der Bastard監督:ジョヴァンニ・ファゴ、キャスト:ジャンニ・ガルコ、クラウディオ・カマソ
1967
Preparati la bara!
Django und die Bande der Gehenkten『皆殺しのジャンゴ』
監督:フェルナンド・バルディ、キャスト:テレンス・ヒル、ホルスト・フランク
1967
Quella sporca storia nel West
Django – Die Totengräber warten schon『ジョニー・ハムレット』
監督:エンツォ・カステラーリ、キャスト:アンドレア・ジョルダーナ、ギルバート・ローランド
1967
Se sei vivo spara
Töte, Django『情無用のジャンゴ』
監督:ジュリオ・クエスティ、キャスト:トマス・ミリアン、ピエロ・ルッリ
1967
Se vuoi vivere… spara!
Andere beten – Django schießt監督:セルジオ・ガローネ、キャスト:イヴァン・ラシモフ、ジョヴァンニ・チャンフリーリャ
1967
Sentenza di morte
Django – Unbarmherzig wie die Sonne監督:マリオ・ランフランキ、キャスト:ロビン・クラーク、トマス・ミリアン
1967
L’uomo, l’orgoglio, la vendetta
Mit Django kam der Tod『裏切りの荒野』
監督:ルイジ・バッツォーニ、キャスト:フランコ・ネロ、ティナ・オーモン
1967
L'uomo venuto per uccidere
Django – unersättlich wie der Satan監督:レオン・クリモフスキー、キャスト:リチャード・ワイラー、ブラッド・ハリス
1967
La vendetta è il mio perdono
Django – sein letzter Gruß監督:ロベルト・マウリ、キャスト:タブ・ハンター、エリカ・ブランク
1967
Lo voglio morto
Django – ich will ihn tot監督:パオロ・ビアンキーニ、キャスト:クレイグ・ヒル、レア・マッサリ
1968
Black Jack
Auf die Knie, Django監督:ジャンフランコ・バルダネッロ、キャスト:ロバート・ウッズ、ルシエンヌ・ブリドゥ
1968
Chiedi perdono a Dio, non a me
Django – den Colt an der Kehle監督:ヴィンツェンツォ・ムソリーノ、キャスト:ジョージ・アルディソン、ピーター・マーテル
1968
Execution
Django – Die Bibel ist kein Kartenspiel監督:ドメニコ・パオレッラ、キャスト:ジョン・リチャードソン、ミモ・パルマーラ
1968
Una lunga fila di croci
Django und Sartana, die tödlichen Zwei監督:セルジオ・ガローネ、キャスト:アンソニーステファン、ウィリアム・ベルガー
1968
Quel caldo maledetto giorno di fuoco
Django spricht kein Vaterunser監督:パオロ・ビアンキーニ、キャスト:ロバート・ウッズ、ジョン・アイルランド
1968
Réquiem para el gringo
Requiem für Django監督:ホセ・ルイス・メリーノ、キャスト:ラング・ジェフリース、フェミ・ベヌッシ
1968
Il suo nome gridava vendetta
Django spricht das Nachtgebet監督:マリオ・カイアーノ、キャスト:アンソニー・ステファン、ウィリアム・ベルガー
1968
T’ammazzo!… raccomandati a Dio
Django, wo steht Dein Sarg?監督:オスヴァルド・チヴィラーニ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、ジョン・アイルランド
1968
Uno di più all’inferno
Django – Melodie in Blei監督:ジョヴァンニ・ファゴ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、ポール・スティーブンス
1968
Uno dopo l’altro
Von Django – mit den besten Empfehlungen監督:ニック・ノストロ、キャスト:リチャード・ハリソン、パメラ・チューダー
1968
Vado… l’ammazzo e torno
Leg ihn um, Django『黄金の三悪人』
監督:エンツォ・カステラーリ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、ギルバート・ローランド
1969
Ciakmull, l’uomo della vendetta
Django – Die Nacht der langen Messer監督:エンツォ・バルボーニ、キャスト:レオナード・マン、ウッディー・ストロード
1969
Dio perdoni la mia pistola
Django – Gott vergib seinem Colt監督:レオポルド・サヴォナ、キャスト:ワイド・プレストン、ロレダナ・ヌシアク
1969
Django il bastardo
Django und die Bande der Bluthunde監督:セルジオ・ガローネ、キャスト:アンソニーステファン、パオロ・ゴズリーノ
1969
Django sfida Sartana
(ドイツ劇場未公開)監督:パスクァーレ・スキティエリ、キャスト:ジョルジョ・アルディソン、トニー・ケンダル
1970
Arrivano Django e Sartana…è la fine!
Django und Sartana kommen監督:デモフィロ・フィダーニ、キャスト:ハント・パワーズ、ゴードン・ミッチェル
1970
C’è Sartana… vendi la pistola e comprati la bara!
Django und Sabata – wie blutige Geier監督:ジュリアーノ・カルニメオ、キャスト:ジョージ・ヒルトン、チャールズ・サウスウッド
1970
Quel maledetto giorno d'inverno…Django e Sartana… all’ultimo sangue
(ドイツ劇場未公開)監督:デモフィロ・フィダーニ、キャスト:ハント・パワーズ、ファビオ・テスティ
1970
Uccidi Django… uccidi per primo!
(ドイツ劇場未公開)監督:セルジオ・ガローネ、キャスト:ジャコモ・ロッシ・スチュアート、アルド・サンブレル
1971
Anche per Django le carogne hanno un prezzo
Auch Djangos Kopf hat seinen Preis監督:ルイジ・バッツェラ、キャスト:ジェフ・キャメロン、ジョン・デズモント
1971
Il mio nome è Mallory "M" come morte
Django – Unerbittlich bis zum Tod監督:マリオ・モローニ、キャスト:ロバート・ウッズ、ガブリエラ・ジョルジェッリ
1971
Quel maledetto giorno della resa dei conti
Django – Der Tag der Abrechnung監督:セルジオ・ガローネ、キャスト:グイド・ロロブリジーダ、タイ・ハーディン
1971
Una pistola per cento croci
Django, eine Pistole für hundert Kreuze監督:カルロ・クロッコーロ、キャスト:トニー・ケンダル、マリーナ・ムリガン
1971
W Django!
Ein Fressen für Django監督:エドアルド・ムラルジア、キャスト:アンソニー・ステファン、クラウコ・オノラート
1972
La lunga cavalcata della vendetta
Djangos blutige Spur監督:タニオ・ボッチア、キャスト:リチャード・ハリソン、アニタ・エクバーグ
1987
Django 2: il grande ritorno
Djangos Rückkehr監督:ネッロ・ロサーティ、キャスト:フランコ・ネロ、クリストファー・コネリ
さて、その元祖となった『続・荒野の用心棒』の主人公ジャンゴだが、監督のセルジオ・コルブッチはこの名前をヨーロッパのジャズ・ギターの第一人者ジャンゴ・ラインハルトから持って来ている。ラインハルトはベルギー生まれのロマ、フランス語でマヌシュと呼ばれるグループの出身らしいが、このマヌシュは『50.ヨーロッパ最大の少数言語』の項で述べたようにドイツのロマ、シンティと同じ方言グループに属している。つまり「ジャンゴ」という名前は本来ロマニ語。その名前の由来について調べてみたら2説あった。
1.Django(またはDžango)はJean、Johannes、Giovanniという名前のロマニ語バージョンである。
2.Džangoとはロマニ語でI wake up、または I woke upという意味である。
困った。どちらの説でも疑問点が出てきてしまったからだ。
1について:
Jean、Johannes、Giovanniのロマニ語バージョンならDžanoとかいう形にはならないのか?その/g/という音素はどこから来たのか。
2について:
調べてみたら「目覚める」というロマニ語はdžungadol、方言によってはdžangadolまたはdžangavel(辞書形は3人称単数形)だそうだが、それなら「私は目覚める」はdžangaduaまたはdžangavua(シンティ)、あるいはdžangadavもしくはdžangavav(その他の方言)、「私は目覚めた」だと džangadomまたはdžangavomとか何とかになると思うのだが。/d/または/v/の音素が消えてしまっているのはなぜか?
つまりどちらも確かに形は似ているとはいえ、前者は音素が一つ余り、後者は一つ足りない。帯に短し襷に長しでどちらもストレートにDžangoにはならない。もっともシンティのdžangavuaが一番近いなとは思ったし、
džangavua→[dʒanɡavʊa]→[dʒanɡaʊa]→[dʒanɡɔ:]→[dʒanɡɔ]
とかなんとか音の変化の流れを解釈すれば説明がつかないことはない。
しかし私はロマニ語ができないので確かなことはわからないし、こんな小さなことは本なんかには出ていないだろうと思ったので人に聞くしかないなと判断し、まずオーストリアのグラーツ大学の教授に上のようなことを述べ、「どっちが正しいんでしょうか?」と問い合わせのメールを出したが音沙汰なし。「この忙しいのになんなんだこの馬鹿メールは?」と無視されたか(されて当然だと我ながら思う)、スパム扱いされて自動的にゴミ箱行きになったかと思い、今度はヨーロッパでロマニ語研究プロジェクトを立てているもう一つの大学、イギリスのマンチェスター大にメールを出してみたら2日後に次のような返事が来た。
Dear 人食いアヒルの子,
unfortunately we are not able to help you.
Reconstructing the etymology of personal name is almost impossible if there are no written records of a given name across a considerable length of time. Unfortunately, this is the case for Django.
Sorry to disappoint you,
*** ***
Romani Project
School of Languages, Linguistics & Cultures
University of Manchester
Manchester M13 9PL, UK
*** ***という部分は研究員の方の名前だが、もちろん伏せ字にしておいた。しかし2日もたってから返事が来たということは一応まじめに検討してくれたのか、それとも単に放っておかれたのか?どちらにしても大変お騒がせしました。
と、いうわけでジャンゴという名前の由来は「わからない」というつまらないオチに終わってしまった。
この記事は身の程知らずにもランキングに参加しています(汗)。

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