本を出版しました。二葉亭四迷など明治時代のロシア語からの翻訳を論じたものです。もう紆余曲折あり過ぎてドッと疲れての出版ですがこういう事情です。

 もともとの内容はさる大学で研究員をやっていた当時書き上げたものですが、最初口約束で言われていた援助をプロジェクト終了時に大学に反故にされ、半分出来かかっていた原稿といっしょに放り出されてしまいました。それも「こんな下らない内容じゃ援助できん」とかいうのならまだわかるのですが、内容を見もしないで、「あなたは日本文学をドイツで専攻していないから教授資格論文審査にかけてあげる資格がありません」って一体なんですか?しかもそれならそれでもっと早く言ってくれればいいものを最後の最後になってこの鉄槌はあり得ない。

 あり得ないとは思ったが食らったもんは仕方がない、今の大学で限りなく収入ゼロに近い非常勤講師をやりながらどうにか原稿を仕上げましたよもう。で、誰か専門家に見てもらおうと思ったら、日本語とロシア語のテキストが読めて私の論旨の是非がチェックできる人物というのがそもそもドイツには私自身くらいしかおらず、誰も推薦やチェックをしてくれる者がいない。
 いろいろ打診し、しまいには大学教授やってるネットの知り合いにまで泣きついて相談したんですが、内容がフリーク過ぎたためかどこも出版援助してくれない。 仕方がないからさる身近な者から「お前金余ってんだろ。よこせ」と金を強奪し、人間終わってる状態でやっと出版にこぎつけました。

 で、やっと出たら出たでつけられた値段を見て驚愕。そのうちアマゾンにも出現するかも知れませんがそこでもこんな感じの値段だと思います。これはもちろん私がつけたんじゃありません。出版社が著者の私のあずかり知らないところで勝手につけたんです。誰も買わないだろこんなんじゃ。印税ゼロは確実です。 
 しかも手元に何冊かある「著者用」(下記参照)以外に私がこの本を欲しいと思ったら30%引きで買わねばならないんです。30%引いたってまだ100ユーロ。買えるわけありませんよ、そんなもん。自分の出した本を自分で買えない、ってなんなんですか?

 だいたい「専門書」(ナニを偉そうに)のカテゴリーに入れられた本はクソ高いものですが、それでもこの値段はあんまりだ、と誰でも思うでしょうが、大学教員の皆さんなら自分の大学の図書館に買わせるって手がありますぜ。自分の懐を痛める必要はありません。また、「自分はこんな下らない本買うのは金輪際ごめんだが、ひょっとしたら誰か他に騙されて買う物好きがいるかもしれない」と心当たりのある方、FBや自分のブログなどで宣伝して誰か裕福な人に買わせましょう。その人から借りればやっぱり自分の懐は痛みません。

 あと、私の手元に著者用として何冊かあります。こういうことするとアマゾンの営業妨害になるかもしれませんが、この値段をまさか図書館員でもなく裕福でもない個人に払わせるのはあまりにもアレなので、50ユーロくらいでお譲りします。人生に一度くらいなら50ユーロの無駄金は使ってもいいという奇特な人がいたらメッセージでも下さい。

 さて、そういうヘタレ本を無理矢理宣伝させていただいて恐縮ですが、この本には次のような利点・使い道があります。

1.やたらと厚いので書架の飾り、机上の文鎮代わり、さらに夜道を襲われた時ブン投げて敵を撃退する武器として最適です。家の者の言によれば「これ、角が当たったら人死ぬぜ」。

2.ドイツ留学を考えておられる皆さんには「だいたいこんな程度の論文を仕上げれば(多分)学位がとれる」という「見本・サンプル」になります。実は私の学位論文はクソで、今考えると「あんなのがよく通ったもんだ」と感心するほど、それに対応して成績もあまり良くなかったのですが、当時これを書いていたらもっといい成績が取れていたとは思います。
 で、まあこの程度を書けばドイツで学位がとれるだろう、大したもんじゃなくてもいいんだな、これくらいならオレにだって書けるわ、という勇気付けになると思います。

 最後の最後に、ひょっとしてこれを日本語に翻訳して日本で商業出版しようとかしてくださる方がいましたら(だってこれ内容はモロ日本文学ですから)お願いします。私はもう疲れきっていて自分で翻訳なんてする気力が無いし、他の人に翻訳してもらってその人になにがしかの翻訳料が入る、ということになればこんな本でも少なくともその方のお役には立ったわけで、まあ私としてその方が嬉しいです。

 実はもう一個書きたいテーマがあるんですわ。上述のクソ学位論文をバージョンアップしたいんです。Übertragung der Informationsstrukturとかいう見掛け倒しのエラそうなタイトルにしたいんですが、この調子だと私死ぬまでに出版にこぎつけることはできないと思います。チーン・・・


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