インターネットになってつくづく便利になったと思うことの一つが、「そういえばあの人は今何をしているのだろう?」とふと思ったりしたときすぐ調べられることだ。「ググる」という言葉ができるほどになったが、私はヘソ曲がりなので、何年か前にメインの検索マシンをGoogleからDuckDuckGoというのに変えた。だからもう何年も「ググる」という行為をしていない。「ダクる」とでも言うのか?とにかくこの検索エンジンだと個人情報があっち側に残らないのが利点だが、それより私はアヒルが好きなのでロゴマークにアヒルを使ってあるというのがこちらに切り替えた理由の第一。第二が私はヘソ曲がりなので「皆が使っている」とか「シェア一位」とか聞くと使いたくなくなるという理由である。
 で、本来ならウィンドウズもワードも使いたくないのだが、ヘソだけは一人前に曲がっていても如何せんIT音痴なのでリナックスやオープンオフィスを使いこなすだけの知識や頭がなく、曲がったヘソの持って行き所がない。それで不本意ながらこの点では主流に呑まれているのである。が、いくらデジタル音痴でもさすがにメインの検索エンジンを変えることくらいは出来るからグーグルをやめた。

 その、「行け行けアヒル」であちこち「そういえばあの人は今どうしているのか」と思いついた人たちの名前を検索して遊んでいたら、何を今更ではあるが、あらためて知って感心したことがいくつかあるのでご紹介。以下は全部DuckDuckGoで行なった検索結果である。Googleだと違う結果になるのだろうか?

 その第一はブルーノ・ニコライの方がモリコーネより年上だった、ということだ。私はてっきりこの人はモリコーネの弟子で、10歳くらい年下かと思っていた。残念ながら1991年に亡くなっている。
 ルイス・エンリケス・バカロフはまだ存命だ。さるデータ・ベースを調べてみたら、この人のヒット曲ランキングのダントツ一位は未だに『ジャンゴ』でせっかく(しかもモリコーネより先に)オスカーを取った『イル・ポスティーノ』とかが完全に無視されている。
 リズ・オルトラーニは2014年の一月に亡くなっている。この人もあの世界的なヒットを飛ばした世界残酷物語が無視されてヒット曲の一位は『怒りの荒野』となっている。実は私は今まで気にしたこともなかったのだが、オルトラーニはフルネームがRiziero、リツィエロというのかリジェーロと発音するのか、なにやら由緒ありげなカッチョいいものであった。日本語表記の「リズ」だとエリザベス・テーラーとかといっしょになってしまいかねないが。

 アレッサンドロ・アレッサンドローニは私が「ダクりはじめた」当時はまだ存命だった。2011までしっかりコンサートなどの音楽活動をしていたということだが残念ながら今年2017年の3月に94歳で亡くなった。名前で言われると「そんな人知らない」と思う人もいるかも知れないが、さすらいの口笛の口笛とギターの演奏をしたのはこの人だといえば、「ああ、あの人か」と思い出すだろう。その後の『夕陽のガンマン』のスコアでも『続夕陽のガンマン』でも口笛をきかせてくれている。アレッサンドローニ氏はいわゆるマルチ演奏家で、ギターはもちろんマンドリンからシタールからいろいろな楽器を演奏していたらしい。しかも年は違うが行っていた幼稚園がモリコーネと同じだそうだ。レオーネがモリコーネと小学校の同級生だったことは有名な話だが、つまり『荒野の用心棒』は子供たちの同窓会作品だったのか。その幼稚園・小学校レベルにさえ達してない映画・スコアしか作れないくせに「プロの映画監督でございます」とかふんぞりかえっている監督や作曲家は廃業するがいい。

小学校時代のセルジオ・レオーネとエンニオ・モリコーネ。r の字がひとつ足りない気がするのだが…
International Movie Database(imdb.com)から
MorricineLeone

 あと、意外なことにこのアレッサンドローニはフランチェスコ・デ・マージと協力して作曲も演奏もしている。『黄金の3悪人』というジョージ・ヒルトン主演の映画があるだろう。テーマ曲をデ・マージが担当しラウールがStranger, stranger, who knows your face?とかいう歌詞を『南から来た用心棒』と全く同じような声で歌う(当たり前だ。下記参照)が、あそこでギターを弾いていたのはこの人だそうだ。世界の狭さに驚いた。
 そのフランチェスコ・デ・マージは残念ながら2005年に亡くなっている。とにかく作曲家の消息については皆結構簡単に見つかった。モリコーネのように名前が一般教養の域にまで達している人はまあ言わずもがなだが、オルトラーニもデ・マージもウィキペディアに載っているし、その他の情報サイトも検索するとドシャドシャ出てくる。だが、それを実際に演奏したり歌ったりした人の消息となるとそうそうドシャ降りという具合にはいかなかった。 すぐに見つかったアレッサンドローニはむしろ例外だ。

 さて、「マカロニウエスタンの声」と言うと普通どんな名前が思い浮かぶだろうか。私はフリークでも専門家でもないが、素人目でいいから名前を挙げろといわれれば、まず第一にロッキー・ロバーツ、その余勢を駆って(?)ベルト・フィア(『63.首相、あなたのせいですよ!』参照)、あとラウール、マウリツィオ・グラーフ、最後にクリスティ、この5人が浮かぶのだが、皆さんはいかがだろうか。エッダ・デロルソ(『86.3人目のセルジオ』参照)を抜かすなと抗議されそうだが、ここでは「歌詞を歌った」人に限ることにする。ごめんなさい。
 
彼らは今何をしているのか、そもそもまだ存命なのか?

 『続・荒野の用心棒』を歌ったロッキー・ロバーツは2005年、デ・マージと同じ年にローマで亡くなっている。この人はフロリダ生まれの本当のアメリカ人で、英語が母語だ。
 『復讐のガンマン』のクリスティ(再び『86.3人目のセルジオ』参照)も比較的楽に見つかった。すぐにイタリア語版のウィキペディアにヒットしたのである。でもこれは私がたまたまマリア・クリスティナ・ブランクッチという本名を知っていたからで、単にChristyとしか知らなかったら相当手間がかかったと思う。まだご存命だ。
 さて、『南から来た用心棒』や『黄金の3悪人』の歌手、上述のラウールだ。私はこの人の本名を知らなかったのでちょっと手間取ってしまった。Raoulだけじゃあ、他に何百人も出てきてどれが目指すラウールなのか全くわからない。片っ端からこれ全部クリックするなんてやだー、と二の足を踏んでいたらなんとフランチェスコ・デ・マージのサイトで彼の本名に言及されていた。Ettore Raul (Raoul) Lo VecchioまたはLovecchioといい、デ・マージの歌をいくつか歌った後は俳優に転向し、実際いくつかの映画に出演している。その後はショウ・ビジネスから手を引いてローマでオリエンタルファッションのブティックを開業して暮らしているそうだが、生年月日も生死も定かではない。
 ラウールは例えばあるサイトで関係のない別のラウールとごっちゃにされて、というかいっしょにくくられれた上、

Raoul is a vocalist known for his many contributions to Ennio Morricone soundtracks.

という紹介文がついているが、これは正しいのか?彼はモリコーネの曲にmany contributionsをしていたのか?私としてはラウールと聞いて思い出す作曲家はなんと言ってもフランチェスコ・デ・マージの方なのだが。モリコーネとくっ付けるべきなのはむしろマウリツィオ・グラーフだと思うのだが。
 が、そのグラーフはラウール以上に情報がない。本名はMaurizio Attanasioというのはわかったが、なぜか生年月日も生死も見つからなかった。Youtubeでは結構みつかり、よくコンサートなんかはしていたらしいことはわかったが、経歴そのものの情報はほとんど見つからなかった。
 マウリツィオ・グラーフもラウールもまた名前を出されるとわからなくなる人がいるかも知れないが、私と同年代の女性なら絶対声は知っているはずだ。それぞれ『続・荒野の一ドル銀貨』『南から来た用心棒』、つまりジュリアーノ・ジェンマが主演した映画の主題歌を歌っている。これらの映画を「二つとも全く見たことがない、ジュリアーノ・ジェンマって誰ですか?」とか言うような同年代の女性がいたら、それこそ日本ナショナリストではないが「あなた本当に日本人?」と聞いてみたいところだ。
 マカロニウェスタンを見る際、ヨーロッパと日本ではもちろん重点というか視点が違うのだが、その彼我の差が最も明確に出ることの一つが実はジュリアーノ・ジェンマの扱いなのである。日本では荻昌弘あたりが「マカロニ・ウェスタンのスターはイーストウッド、フランコ・ネロ、ジュリアーノ・ジェンマ」とか言っていたことがあるが、これはあくまで男性側の意見で、私達にとってはイーストウッドとネロが束になってかかってきてもジェンマにはかなわなかっただろう。ネロは美男子だったし、イーストウッドも顔だけ見れば結構線が細かったのでまあ女性ファンもいたが、本来「男っぽさ」を全面に打ち出すタイプの主人公は女性は嫌いなのである。そういえばあのころ、クラスにも「ショーン・コネリーとか見てると臭いがうつりそう。ゲー気持ち悪い」とまで言っていたクラスメートがいたほどだ。なお、私は今までの人生でリー・バン・クリーフが好き~といってキャーキャーいう女性にはただの一度もお目にかかったことがない。
 ドイツに来て「マカロニウェスタンのスターを挙げて下さい」とそこら辺の人に聞いてみるといい。イーストウッドはまあ別格としてその次に挙げられるのはフランコ・ネロよりテレンス・ヒルとバッド・スペンサーが先に来るはずだ。ネロはその後だと思う。ジェンマにいたっては完全にトマス・ミリアンや下手をするとジャンニ・ガルコとかあの辺と同じレベルだ。でもさすがに彼が亡くなった時は新聞に載った。「マカロニウェスタンの俳優で一番のイケメン」と書いてあった。

 さて、そのラウール、グラーフ以上にお手上げだったのが、『続・荒野の用心棒』のイタリア語バージョンを歌った上記ベルト・フィア(またはロベルト・フィア、どちらの名も使っているそうだ)だった。上の人たちは少なくとも歌った歌とか出演した映画とか、作品の紹介がいくつもしてあったが、フィアの場合は『続・荒野の用心棒』だけで他の言及が全くない。もしかするとイタリア語のサイトを探せばみつかるのかもしれない。イタリア語の出来る方がいたらお願いしたい。実は私は当時買ったイタリア語バージョンのレコード(「レコード」である!)をまだ持っているのだが、そのジャケットに「先日ミルバと共に来日したベルト・フィアが歌っている」と書いてある。ミルバと来日するくらいだからある程度名の通った人なのではないのか?それともフィア氏はミルバの荷物持ちかなんかだったのか?

 最後にもう一つ。アレッサンドローニだが、彼は自分のバンド、というか合唱団を持っていていくつかの映画で歌っているが、そのメンバーを見て驚いた。クリスティ(マリア・クリスティナ・ブランクッチ)が消してあるのはなぜだかわからないが、ラウールやエッダ・デロルソがいる。つまりアレッサンドローニを通してモリコーネとデ・マージはしっかりつながっているのだ。

 何、ここで挙げた名前や曲、映画の題名を全く知らない?それが正常だ。

この記事は身の程知らずにもランキングに参加しています(汗)。
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