「閑話休題」ならぬ「休題閑話」では人食いアヒルの子がネットなどで見つけた面白い記事を勝手に翻訳して紹介しています。下の記事はうちでとっている南ドイツ新聞に土曜日ごとに挟まってくる小冊子に『悪のネットの中で』というタイトルで2016年12月16日にのったものですが、長いので6回に分けます。

前回の続きです。

 学者たちの理解では心的外傷とは「そのままではそれを克服することのできないような、苦痛を与える事象」をいう。多くの場合身体的あるいは精神的な暴力が原因であり、心的外傷後ストレス障害を引き起こすことも少なくない。ウルム大学病院の精神身体医学の教授でドイツの心的外傷研究財団の幹部会員でもあるハラルト・ギュンデル氏に、『南ドイツ新聞マガジン』がArvatoの従業員をインタビューして作成した証言の写しをいくつか読んでもらった。教授によればそれらの描写には典型的な心的外傷後ストレス障害の症状が現れている可能性があるという。苦痛を与えるような画像やビデオのシーケンス、それが仕事を離れている時でも後から後から目の前にありありと浮かぶ。繰り返し見る悪夢。ほんのちょっとでもビデオの内容を想起させるような状況になると度を過ぎた驚愕反応をしてしまう。体は何処も悪くないのにおこる痛み。社会逃避。消耗感、何事にも無感覚になってしまったようなふるまい。性欲の消失。

子供ポルノのビデオを見てからというもの、本当にもう尼僧になれそうな感じです-セックスとか考えただけでもう無理。もう一年以上もパートナーとか緊密になれてません。触られただけでもう震えが来るんですよ。

突然髪の毛が束になって抜けてしまいました。シャワーを浴びた後とか仕事の最中でさえ抜けます。主治医に言われました、その仕事辞めなきゃ駄目だって。

ひっきりなしに人がデスクから飛び上がってキッチンに走りこむんです。で、斬首のビデオのあと少しでも新鮮な空気を吸うために窓をバーッと開けるんです。酔っ払ってしまうか、やたらと「草」をふかす。でないととてもやっていけません。

 フェイスブックは『南ドイツ新聞マガジン』の問いに答えてこう説明している。「従業員は誰でも精神衛生管理を要求できます。従業員の希望があれば随時要請できるものです。」しかし従業員は異口同音に、Arvatoは精神上の問題は自己処理に任せっぱなしにしていた感じだったと言っている。十分に管理などしてもらえなかったし、すさまじい画像やビデオを扱う仕事から被る精神的苦痛に対してそれなりの準備トレーニングもしてもらえなかった。

私たちはArvatoは精神衛生のサポートをしている、という項に署名させられました。でも実際はサポートを受けるなんて不可能だった。会社は何もしてくれはしませんでした。

 雇用者は精神の苦痛から守られなければいけない、と2013年からドイツ労働法の第4条、第五条で決まっている。「実際に健康上の傷害が生じるまで待っていないで事前にリスクをできるだけ減らしておく、ということなんです」と、法律事務所dkaベルリンの労働法担当の弁護士ラファエル・カルステンは述べる。氏によれば、「コンテンツ・モデレーター」たちが職業医師による健康管理を受けていない場合は労働法違反だろうと言う:「雇用者は実際に効果のある保護措置をとらないといけない。従業員がショックを与えるようなビデオや画像を見た場合は仕事を中断して、いつでも開かれている相談窓口とも相談して自分の状態をよく考えてみる、こういうことができないといけない。できれば医師と相談することです。医師には黙秘の義務がありますから」。しかしArvatoの従業員は誰一人としてそういう相談ができる医者のことなど聞いていない。ソース提供者によれば、予約なしで自由にいつでも来られるグループ会合はあったそうで、問題点を話し合うことになっていたとのことだ。それを行なっていたのは社会教育学専門の女性で、心理学の専門家ではなかったと全員口を揃えて証言している。当紙が話を聞いた従業員にはこの会合に参加した者など誰もいなかった。知りあいでもない職場の同僚の前で自分の極めて個人的な問題を口に出すのは気おくれするものだ。
 さる女性従業員は繰り返しその社会教育の人と個人的に会合してもらおうとしたが、長い間待たされて結局あきらめてしまった。『南ドイツ新聞マガジン』の問い合わせに対し、精神衛生の担当者がどんな資格を持っているのか、あるいはその人物は黙秘の義務をになっているのかについてフェイスブックからは正確なデータを示してもらえていない。

私が出て来た部署だったら、ソーシャルワーカーなんて私が話したことをすぐ全部私の上司に報告したでしょう。で、その上司にクビを言い渡されますね。この会社を信用してる人なんてチームには誰もいませんよ。どうして自分たちの心配事を打ち明けたりするもんですか。

 しかし、職業上残酷なメディアの内容と向き合っている人たちに対して、対処の方法はあるのだ。例えば青少年に害のあるメディアをチェックしている連邦検査局は残酷ビデオも検査しているが、新入りの従業員にはショックを与えるような内容の扱い方について定期的なトレーニングがある。「そういう映画をいっぺんに見る必要はない。いつでも中断していい、何か他の事をしてからまた戻ってきて再開できるんです」と連邦検査局のチーフ、マルティナ・ハナク-マインケは言っている。ソーシャルワーカーと個々に会うことができるし、心理学や心的外傷の専門家もいつでも待機している。従業員がきわめてショッキングな資料を吟味している別の部局には厳しい規則があって、そういう映画を吟味するのは週当たり最高8時間が限度、さらにそれが与える影響のことをその場で話し合いできるよう2人がチームを組んで行なう。こういう仕事のために特に訓練された法律家を雇い入れるところも多い。

国では軍隊にいました。だから戦争や死体の画像にはショックを受けません。私が参ってしまったのは何が出てくるかわからないからです。頭から離れないビデオが一つある。女の人がハイヒールで子猫をグチャグチャに踏み潰すんです。セックス・フェチのビデオの一部ですよ。人間にこういうことが出来るなんて考えたことがなかった。

この猫ビデオは削除となった。『南ドイツ新聞マガジン』が入手した社内文書の15条1項に違反するからだ。サディズム。「性的サディズムとは他の生き物の苦痛をエロチックな楽しみとすることである」。さすがのフェイスブックでも許容されないのである。

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